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冷却式(冷凍式)圧縮空気除湿装置(エアドライヤー)の仕組み

公開:2017.06
更新:
2020.02 エアドライヤーの仕組みを追加 タイトル変更
2020.03 冷却源による型式の分類を追加
はじめに
圧縮空気を結露するまで冷却し、除湿を行う除湿機が冷却式ドライヤーです。 冷凍機を使用して冷媒で冷却除湿する方式は冷凍式除湿機または冷凍式ドライヤーと呼ばれています。
当社では不凍液(ブライン)や水を使用して冷却除湿する方式を採用しています。
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冷却式エアードライヤーの構成要素
冷却式(冷凍式)除湿機は大きく4つに分けて構成されています。
この他に冷却するための冷却源が必要となります。冷却源には冷水を製造するチラー、冷却水を製造するクーリングタワー、冷媒ガス(フロン等)を製造する冷凍機などがあります。
このコラムではハイグロマスターAE型を例に各機器の機能について説明していきます。
上記カッコ内が画像内の名称に対応します。
冷却式エアードライヤーの仕組み
冷却式エアードライヤーはエアコンの除湿と同様に冷却して空気中の水分を結露させて除湿を行う方式です。
塗装工程や半導体製造工程を除いた一般的な工場で使用されており、小型のコンプレッサーでは内蔵しているものもあります。通年一定の露点温度を要求される場合には10℃という仕様のドライヤーが一般的です。
冷却源にはフロンガスや冷水、冷却水などを使用し、冷却、凝縮を行います。
また、冷却式エアドライヤーではエコノマイザーを具備することが多く、エコノマイザーで一次冷却や二次凝縮の防止などを行います。
除湿空気の流れ
1. エアードライヤーに40℃、湿度100%の空気が流入します。

2. エコノマイザーや冷却吸着塔で10℃まで冷却します。
一般的なドライヤーでは10℃程度まで冷却されます。
エコノマイザーでは除湿済みの低温空気と熱交換して冷却します。
冷却吸着塔では冷却源となるフロンや冷水、冷却水などと熱交換して冷却します。

冷却により圧縮空気中の水蒸気が凝縮し、ドレン(水滴)となります。
発生したドレンはドレンセパレーターにより圧縮空気と分離し、オートドレンにより排出されます。
一般的なドライヤーではこの時の温度を「露点温度」として表示しています。
3. エコノマイザーで再加熱して送気されます。

エコノマイザーで未除湿の高温空気と熱交換することで再加熱され、乾燥空気となってエアドライヤーから送気されます。ドレンセパレーターが粗悪であったり、不十分であったりすると、この再加熱の際にミスト状のドレンが再蒸発し、露点温度および相対湿度が上昇します。このため、実際に露点温度を露点計や水分計で測定すると表示している露点温度と一致しない場合が多くあります。このため、「露点温度の表示は低いのにドレンが発生する」といった問題が発生します。また、ドレンセパレーターが粗悪なため露点温度の上昇分を見込んで冷却することはエネルギーの無駄遣いとなります。
次に各構成機器に求められる機能と性能について解説します。
関連するリンク
- コラム「圧縮空気除湿装置(エアドライヤー)とは」
https://www.hygro.co.jp/media/faqs/20181023-13 - コラム「「圧力下露点温度」と「大気圧下露点温度」の違い」
https://www.hygro.co.jp/media/faqs/20170602-2 - コラム「エアバイディングと均圧」
https://www.hygro.co.jp/media/faqs/20181004-12
冷却源による型式の違い
一般的な冷却式(冷凍式)エアドライヤーはフロン等の冷媒と圧縮空気を熱交換する方式です。
冷凍機を使用して冷却を行うため、圧縮空気を冷却して除湿するエアドライヤーは冷凍式ドライヤーとも呼ばれています。
ハイグロマスターでは冷却水や冷水、空調水、井水、工業用水を冷却源として使用しています。
ハイグロマスターは冷却源によって型式が異なりますのでご紹介します。
型式一覧と使用する冷却源
A型,AE型
A型はAE型よりエコノマイザーを除外、加熱送気を必要としないお客様向けです。

-α°DP型
外気湿球温度近くまで冷却された冷却水により圧縮空気を冷却し、外気温度より少し低い露点温度のドレンレスエアーが得られます。一般的な冷凍式ドライヤーと比較して大幅な省エネルギーが可能です。オプションでポンプをインバーターにすることで更なる省エネルギーを実現します。

T型
チリングユニット(チラー)には負荷追従性、省エネルギー性に優れたチラーを使用しており、オプションで設定温度の外気追従や外部入力など様々な仕様に対応します。

IP型
クーリングタワー(冷却水)による一次冷却、チリングユニットで作られた冷水による二次冷却を行うことによりドレンを確実に分離排出します。
最適な冷却源を自動的に選択することで優れた省エネルギー性と露点性能を実現します。
また、二次冷却には専用チラー水のほかに工業用水、井水、空調水など様々な冷却源に対応できます。

F型
従来、圧力下でマイナスとなる低露点のエアーを必要とする時は、シリカゲル、アルミナゲル、モレキュラシーブスなどを利用した装置が使用されていたものを、冷却式で同様の露点を得ることができ、しかも、吸湿式(吸着式)装置の持つ多くの欠点を排除することに成功した装置です。

「どのハイグロマスターにすればよいかわからない」という方も仕様をお伝えいただければ弊社で最適なハイグロマスターを選定いたします。
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次にドライヤー内部の構成について詳しく見ていきましょう。
空気対空気熱交換器(エコノマイザー)
空気圧縮機(コンプレッサー)から送られた圧縮空気はエコノマイザーに入ります。 エコノマイザーは入口の高温圧縮空気と冷却除湿済みの低温空気が熱交換する空気対空気の熱交換器です。熱交換することで入口の高温空気は温度が低下し、冷却除湿済みの低温空気は温度が上昇します。このエコノマイザーを取り付けることによる効果は3つあります。
1. 冷却負荷の低減
入口高温空気は除湿済みの低温空気と熱交換することで温度が低下するため、冷却負荷を抑えることができまます。冷却負荷を抑えることは省エネにつながります。
2. 除湿済み空気の乾燥度の上昇(相対湿度の低下)
除湿済みの低温空気は入口高温空気と熱交換することで温度が上昇するため、相対湿度が低下します。相対湿度が低下することで圧縮空気の再凝縮防止、乾燥能力の向上といった空気品質の向上が見込めます。
3. 体積増加による空気圧縮機運転時間の減少
除湿済みの低温空気は入口高温空気と熱交換することで温度が上昇するため、ボイルの法則により同じ重量の空気でも体積が増加します。体積が増加することで空気圧縮機の運転時間の減少が見込めます。
以上のようにエコノマイザーを取り付けることで様々なメリットがあります。
エコノマイザーは圧力損失が少ないこと、熱交換効率が高いこと、配管内の錆びやゴミの混入に強いことが求められます。
なお、乾燥剤を使用する吸着式の一次除湿に冷却式除湿機を使用する場合は、流入する空気温度が高いと水分の吸着性能が低下する傾向があるため加熱せずに吸着式除湿機に送気した方が吸着式除湿機の性能が向上します。
また、吸着式除湿機では乾燥剤(吸湿剤)が水分を吸着時に発熱する(吸着熱)ため除湿後の空気温度も上昇するため、吸着式除湿機の一次除湿として冷却式を採用した場合、エコノマイザーを取り付けることはあまりメリットがあるとはいえません。
水(冷媒)対空気熱交換器(冷却吸着塔)
冷却式除湿機ではフロンガスなどの冷媒、またはクーリングタワーや冷凍機で冷やされた水を使用して圧縮空気を冷却除湿します。冷媒や水と空気を熱交換し、空気中の水蒸気を凝縮することで空気の露点温度は低下(除湿)します。上の図では冷却水と圧縮空気を熱交換して除湿しています。
熱交換器の水側回路が汚れにより熱交換機能が低下すると設計時の性能が発揮できずドレントラブルの原因になるので、特に外気との接触により冷却水が汚れがちな開放式クーリングタワーを使用する場合には水質管理が重要になります。
除湿機はエコノマイザーと同様に圧力損失が少ないこと、熱交換効率が高いこと、配管内の錆びやゴミの混入に強いことが求められます。
ドレンセパレーター
冷却により発生した凝縮水(ドレン)と空気を分離するのがセパレーターです。 上の図では冷却吸着塔に内蔵されています。圧縮空気中の水蒸気が冷却により凝縮すると霧状のドレンとなります。
セパレーターは圧力損失を抑えつつ霧状のドレンを確実に空気と分離することが求められます。 ドレンを充分に分離せずに工場に送気したりエコノマイザーで熱交換すると空気中の霧状のドレンが再度水蒸気になるため、冷却した温度=露点温度とならず目標となる露点とするためには過度の冷却が必要になり不経済です。
セパレート性能が向上することで運転コストの低下が期待できます。弊社の冷却式除湿機では低圧損で99%以上水分を分離できるデミスターを標準で採用しており、冷却温度とほぼ一致した露点温度の圧縮空気を得ることができます。
ドレン排出装置(オートドレン弁)
冷却により発生したドレンは塔外に排出する必要があります。上の図ではオートドレン弁がそれにあたります。
ドレン排出では主に以下の3点が要求されます。
「確実に排出されること」
「ごみや油等により閉塞しないこと」
「排出時に圧縮空気のロス(エアーロス)が少ない」
ドレン排出装置は「ドレンは出したいが、エアーは無駄にしたくない」という相反した機能を実現することが求められます。弊社のオートドレン弁は上の条件を電源なしで行うことができるドレン排出装置です。
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オートドレン弁

ドレンタンク

おわりに
以上大まかに4つに分類して冷却式除湿機を説明しました。
昨今は省スペース、コンパクトな小型の空気除湿機が多く販売されています。
小型コンパクトな圧縮空気除湿機は圧力損失が大きかったり、配管内の錆びやゴミの混入に弱く入口にフィルターが必要になったりといった運用コストの上昇を招く機種も多く存在しています。除湿機の選定は設置スペース、導入コストのほかに運用コストも考慮しながら行わなければ全体コストの低減にはなりません。
今回のコラムで構造を理解した上でさらに冷却式除湿機の省エネ運用に興味がある方は「技術情報」をご覧ください。
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